炉心溶融とは。注目したい原子力資料情報室の記者会見
福島第一原子力発電所は東芝が受注したものだったことをはじめて知った。東芝という会社は、原子力発電所のプラント建設会社として、かなりの実績をあげている。原子力事業部のホームページには、プラントの受注実績を書いている。
ぼくの姓が東芝だったのは、まったくの偶然。ぼくと東芝の関係は、単にレグザというテレビの愛好者というぐらいでしかない。
メルトダウン(炉心溶融)について、福島第一原発の3号機でも、1号機と同じ状態になり、最悪の危険性さえありうるということなので、メルトダウンについての説明を引用しておこう。
以下はニコニコ大百科(仮)からの引用。正確にていねいに書かれていると判断する。
概要
定常運転中の炉心は冷却材によって絶えず除熱され、出力も一定のため、炉心溶融は起こらない。
炉心溶融は冷却材喪失事故(Loss Of Coolant Accident LOCA)か、反応度事故(Reactive Initiated Accident RIA)に、更なるトラブルが重なった場合、起こりうる。LOCAとRIAに対しては、工学的安全装置や設計段階での何重もの対策が行われている。もしもそれらの対策が有効に機能しなかった場合、炉心溶融は発生しうる。確率論的安全評価では、燃料棒の温度が1200度に達すると、炉心溶融が起きると仮定している。(この値は実験で確かめられた温度よりも低い)
なお、炉心溶融と放射性物質の重大な外部放出を=で結びつける論調が一部に存在するが、スリーマイルアイランド島の事故から明らかなように、これは間違いである。
大量の放射性物質が外部に放出されるには、圧力容器のみならず、格納容器の大規模な破壊も必要である。
冷却材喪失事故 LOCA
原子炉冷却系の配管が破損したりすることにより、冷却材が失われる事故のことを冷却材喪失事故(LOCA)とよぶ。
冷却材の流出が発生すると、原子炉は自動的に停止するが、核燃料は原子炉停止後も長時間熱を出し続ける。そのため、失われた冷却水を補充して、冷却し続けなければならない。それらに対応するため、原子炉には非常用炉心冷却装置(Emergency Core Cooling System ECCS)が存在する。 ECCSは冷却材の喪失や、圧力の低下などを感知すると自動で起動され、原子炉に強制的に注水して炉心冷却を続ける。
LOCAの際に何らかのトラブルにより、ECCSが正常に作動しなかった場合、炉心溶融の可能性が発生する。
スリーマイルアイランド島原子力発電所事故
スリーマイルアイランド島原子力発電所事故はLOCAによる炉心溶融事故である。INESではレベル5相当。
この事故の発端は、主給水ポンプの故障である。
主給水ポンプの停止により、原子炉は自動的に緊急停止。冷却系配管の圧力が上昇し、配管の加圧器逃し弁が自動的に開き、配管の圧力を低下させた。 ところが、加圧器逃し弁のひとつが開状態のまま固着され、圧力低下後も閉まらなくなった。これにより当該の弁から冷却水が流出し、結果的に小規模配管の破断と同じ状況になった。
そのため、配管の圧力が大きく低下したため、ECCSが起動され炉心への注水と除熱が行われた。ところが運転員のミスにより(緊急手順に違反して)ECCSは手動で停止させられた。 その結果、原子炉圧力容器内の冷却水が減少し、一時は炉心が剥き出しになった。そして、冷却不足から炉心溶融が発生した。後に再起動されたECCSにより炉心に注水、事故発生から15時間50分後に事態は制御可能な状況に戻った。
なお、原子炉圧力容器はダメージを受けたものの、封じ込め機能は保たれていた。この事故による外部への放射性物質の漏洩は限定的で、周辺環境への放射線の影響はほとんど無視できる値であった。
この事故は小規模配管での破断事故でも、炉心溶融という重大事象が発生しうるという事実も示した。この事故によって、それまで大規模配管の破断に比較して、軽視されがちだった小規模配管の破断事故にも、関心が向けられるようになった。 そのほかにも、人間工学上の知見、運転員教育の重要性、ヒューマンエラーなど、数多くの教訓が得られた。
それらは現在の世界各国の原子力発電所に生かされている。
東京電力 福島第一原子力発電所事故
2011年3月11日に起きた東北地方太平洋沖地震によって被災し停電、炉心の冷却を予備電源でまかなっていたものの、19時頃に故障した。
冷却水が蒸発、原子炉の水位が下がる中で、12日未明に上記の排出を行うなど爆発を防止する対策が行われたものの、同日15時頃に爆発事故が発生、また、炉心溶融によって放出されられるセシウムも検出された。
日本の原子力発電所での事故としては史上最悪となった。
反応度事故 RIA
出力が一定の原子炉は一定のペースで核分裂が連鎖反応している。(臨界)以降、核分裂の数=出力と考えてよい。
これは一回の核分裂で放出される中性子のうち、きっかり1つだけが新たな核分裂を起こすことを意味する。 次の世代の核分裂を起こす中性子が1つよりも多くなれば、世代が増すごとに起きる核分裂反応も多くなる。これは超臨界などと呼ばれる。
※世代ごとに2個の中性子が次の核分裂に使われるとすれば、0世代と比較して、1世代後は2倍、2世代後は4倍、3世代後は8倍の核分裂が起こる
通常の原子炉では核分裂1世代あたりにかかる平均時間は約0.1秒である。(つまり1秒間に10世代分の核分裂が起こっている) また核分裂反応を増加させるときは1世代あたり0.1%程度増える(0.1%の正の反応度を投入と表現する)よう制御される。
この場合、1秒後の原子炉の出力上昇は1.01倍程度と緩やかな水準である。 ところが、1ドル(約0.7%)と呼ばれる値を超える反応度を与えると、原子炉の出力は瞬間的に上昇するようになる。
1ドルきっかりの場合、即発臨界と呼ばれる状態となる。即発臨界では核分裂1世代にかかる時間が、0.0001秒程度ときわめて短くなる。 仮に即発臨界の状態で、0.1%の正の反応度が投入されると、『単純計算では』1秒後の原子炉出力は2万2千倍に達する。
RIAは何らかのトラブルによって、1ドルより多くの正の反応度が短時間に投入されることによって発生する。
このとき、原子炉は即発臨界以上の状態となり、出力はミリ秒の時間単位で急速に上昇する。同時に、ドップラー効果と呼ばれる現象などから、負の反応度が投入され、やがて出力上昇は停止し下降に転ずる。 結果的に、出力変動は数十〜数百ミリ秒の間に鋭い山形を示す。
このとき発生した熱量によっては、燃料棒の破損が起こりうる。
危険は、まだまだ続いている。1号機(460MVe)よりも3号機(784MVe)の方が出力が大きいので、心配だ。
昨日、記者会見の記事として次のようなものがあった。参考になるのではないだろうか。
【PJニュース 2011年3月13日】特定非営利活動法人原子力資料情報室が2011年3月12日20時から福島原発に関する緊急記者会見を開催した。原子力発電所の設計者を含む5名から政府の発表やマスメディアの報道では触れられない福島第一、第二原子力発電所の深刻な状況について説明がなされた。
会見内容は動画サイト「ユーストリーム」でも中継された。当初は自由報道協会との共催という形で計画されたが、通信状態が悪く、自由報道協会内部のコンセンサスが得られなかったために上記の形になった。
最初の発言者は上澤千尋氏(原子力資料情報室・原子力安全問題担当)である。上澤氏は政府の発表が実態とは異なり、もっと深刻であると批判した。
第二の発言者は後藤政志氏(東芝・元原子炉格納容器設計者)である。今回は冷却用の非常用ディーゼル発電機が使用できなくなったことが原因である。非常用ディーゼル発電機は文字通り、非常用に使用するもので普段使用していないものである。普段使用していない機械を稼働させる場合は稼働に失敗しやすい。そのために非常時を想定して定期的に稼働確認をするなどの対策をすると説明した。
後藤氏は15時半ごろに起きた福島第一原発の爆発が数時間後に発表されたことが信じられないと、政府や東京電力の隠蔽体質を批判した。これまで後藤氏は柴田宏行というペンネームで活動したが、今回初めて実名で会見した。それだけ福島原発の問題に怒りを抱き、重大な覚悟で会見に臨んでいるという。
第三の発言者は田中三彦氏(日立バブコック・元原子力圧力容器設計者・サイエンスライター)である。よく地震時に原発が自動停止したと報道されるが、これは安全ということを意味しない。制御棒を入れて連鎖反応を止めているだけであり、熱発生は止まらないと説明した。
第四の発言者は海渡雄一・弁護士(浜岡原子力発電所運転差止弁護団)である。海渡氏が訴訟代理人になっている浜岡原発運転差止訴訟では東海地震の発生で浜岡原発が重大な事故を起こし、日本国民の生命身体に甚大な被害が発生すると主張している。地震時の電源不足による事故発生の危険性は浜岡原発所運転差止訴訟で指摘済みであると主張した。
福島県は12日の18時半頃になって避難指示を半径20キロメートル圏内に拡大したが、これを遅過ぎると海渡氏は批判した。「念のため」ではなく、当然しなければならない避難であった。この点について最後の発言者の伴英幸氏(原子力資料情報室・共同代表)は先例のない中では迅速であったと政府に理解を示した。しかし、海渡氏は炉心が冷却できなくなっていることは前日に判明しているはずであり、その時点で対処すべきと反論した。
明日は、一般質問をおこなう。でも震災のことや原発のことが気になって仕方がない。