ディズニーによるスター・ウォーズ三部作
スター・ウォーズの新しい三部作を見終わった。新三部作は、ハン・ソロ、レイア姫、ルークという今までの登場人物なしには成り立たない物語だった。今までの三部作＋三部作で構成された壮大な物語を受け継ぐ物語としては、十分に成功しているとは言いがたいのではないだろうか。
軍隊をもたない民主的だった共和国連邦の国々が、どうして軍隊をもつようになり、共和国連邦が強大な帝国に変貌したのかを描き、帝国がどのようにして崩壊したのかを描いたのがスター・ウォーズだった。共和国連邦が帝国に変貌を遂げたのは20数年の中での話であり、帝国となった国が崩壊したのは、帝国誕生から20数年間の中でのことだった。この歴史からすれば、民主的な共和国連邦が復活するのは当然のことだったし、歴史の教訓からすれば、帝国に変貌した誤りを克服する道を歩むのは当然だったと思う。しかし、帝国崩壊後実現したのは、混沌とした世界であり、レイアはルークが戦っていたときと同じようにレジスタンスのまま将軍と呼ばれるようになっていた。
ルークは、ジェダイが死に絶えた後、生き残った唯一のジェダイとして、何もかもに失望して隠遁生活を送り、居場所さえつかめない存在として登場した。
この設定は、三部作＋三部作の流れからいえば納得できない。帝国の崩壊＝強い民主的連邦国家の復活だったはずだ。スターウォーズのエピソード1で描かれた連邦国家は、十分な統治能力をもっていたと思われる。連邦国家に対してクーデターを企てたのは、議長であったパルパティーンだったし、その手先となったのはアナキン・スカイウォーカーだった。アナキンはジェダイとの戦いにおいて瀕死の重傷を負い、半分機械の体をまとうダース・ベイダーとして生きるようになる。
パルパティーンとダース・ベイダーという独裁者によって成り立っていた帝国は、ヒットラー・ドイツのように基盤としては強大なものにはならず、この2人の支配の崩壊によって崩壊する運命だったと思われる。力による支配を続ける帝国は、強大な存在になるために新しい巨大な宇宙基地を作ろうとしており、この建設を止めるためにルークたちとの戦いになる。これこそがスターウォーズの世界だった。
なぜ民主的な共和国が存在せず、ファースト・オーダーと呼ばれる帝国軍の残党が大きな力を持っているのか。どうしてレジスタンスの方が小さいのか。そもそもその設定がよく分からない。星々の国はバラバラなままだ。この描き方だと帝国の崩壊以後、民主的な共和国連邦は再建されず、依然として混沌とした戦いが続いており、崩壊した帝国の側にまだ大きな力が残っているということになる。ルークたちの戦いは、帝国を崩壊させただけで根本的な希望を生み出すものではなかったという設定は、帝国好きのディズニーらしいものではないかと勘ぐりたくなる。
もし、民主的な連邦国家が再建されずにいたとすれば、レジスタンスを率いるのはルークとレイアであり、ハン・ソロだったはずだ。こういう世界として描いた方がまだ物語を受け継ぐのにふさわしかったと思われる。民主的な共和国連邦が再建されたあと、他の宇宙から脅威が現れてそれと向き合わざるを得ないという描き方もあったと思われる。
精神的にも戦士としても成長したルークが、戦いに失望して身を隠し、隠遁生活を送るという設定が、そもそも腑に落ちない。ルークは新たなジェダイを発掘して養成している存在として、ヨーダと同じように晩年を生きるというのが、もっともらしいと思えるのだがどうだろうか。
同じ俳優でスター・ウォーズを描くためには、ずいぶんな時間が経ってしまった。レイア役を演じたキャリー・フィッシャーも2016年には亡くなり、マーク・ハミルもハリソン・フォードも年をとった。新しい三部作を引っ張ってこれたのは、過去のスター・ウォーズの存在であり、活躍した俳優たちがいて初めて作られた新三部作だった。しかも新三部作は、最大の敵がまたしてもパルパティーンだったという設定では、帝国との戦いが未だに続いており、最終的な決着をつけたのはレイだったという話になる。
ルークとハン・ソロたちの戦いは何だったのか。
今までのスター・ウォーズの話を引きずった新三部作は、全体を見通した中で評価されると思われる。1977年から公開され2020年まで続いた43年にわたる断続的な物語の中でこの新三部作をどう評価するか。観客はすでにその答えを出しているのではないだろうか。
興行成績が振るわないという形で。賛否両論の根底に横たわっているのは、根本的な設定問題ではないだろうか。ディズニーによるスター・ウォーズ三部作は、以前のスター・ウォーズとは似て非なるもの。映像は迫力満点。音響も最高だった。レイは勇敢だった。彼女の意志の強さはダース・ベイダーと戦ったルークを超えていた。彼女の目に宿る意志の強さは印象深い。
