朝、雨の高野口駅で 2005年10月11日(火)

出来事

高野口駅に着いたのは6時25分頃だった。雨が降っていた。駅に急ぐ人は、車から降りると傘を差して足早に駅舎に駆け込んでくる。
まだ少し時間があったので、ドリップ式のコーヒーの自動販売機でブラックを選んだ。
温かいコーヒーがおいしい。
6時半が近づいてくるといろいろな車がタクシー乗り場に車を止めて、ドアが開き人が降りてくる。
笠田駅と違って駅舎内は広い。駅舎に入ったすぐ左手にキヨスクがあり、年配の女の人が店番をしている。新聞を買いにくる人も顔見知りで親しそうに声をかけ言葉を交わしている。
ロビーの天井は高く、真ん中に長いすのベンチが並べられ背中合わせに置かれている。
約束の6時半になってもビラを持った人は現れない。駅員が窓口のシャッターを開けて仕事の準備を始めている。
ぼくは、コーヒーを飲みながら壁に貼っていたポスターを眺めて書かれている文字を読んだ。文字はすぐに読み終わってしまったので、今度はベンチに腰を下ろしてぼんやりとホームの方を見た。橋本方面行きのホームには人が何人も立っている。
すぐにホームに電車が入ってきた。
降りてくるお客さんから切符を受け取るために、駅員さんが改札の前に立った。JR駅で制帽、制服の駅員さんを見るのは久しぶりだ。
改札口から少し離れた横に小さな本箱がある。近寄ってみると高野口町の図書館文庫だった。縦2段の本箱は、家庭用の電話台のような小さなものだ。上の段に並べられた本の上にB6版の本が横置きされていた。その本は「五木寛之 蓮如物語」という本だった。ぱらぱらめくると枠の中に文章が書かれてあり、多くの漢字にルビが振られていた。
児童文学書である。
雨はかなり強く降っていた。赤い車が止まり、助手席から女の人が降りてきた。
雨の中に浮かぶ1枚の絵のようだった。
まだビラを持っている人は現れない。
ぼくは「蓮如物語」を読み始めた。雨の日の古風な駅のロビーに妙に似合う優しい語り口の物語だった。
7時になってもビラを持った人は現れなかった。
雨が降り続ける景色の先に九度山の河根行きのバスが止まっている。駅前の古風な旅館も雨に濡れている。
「蓮如物語」に惹かれながら見た高野口駅の朝の情景。雨が作り出す柔らかな風景。

出来事

Posted by 東芝 弘明