ロシア国民の状況と日本の状況の類似点

雑感

ロシアによるウクライナへの侵略戦争に対し、日本のメディアは、侵略戦争という表現をあまり使わず「侵攻」という言葉を多用している問題が気になっている。報道の仕方も、ロシアの発表と並べてウクライナの発表を示すという両論併記が基本だ。これも気になる。マスメディアは、自分の目で事件に分け入って、確固たる事実に基づいて、自分の判断や考え方も示すものではないのか。そうしないと、直接事実に触れることができない一般国民には真実が伝わらないのではないかと思う。

国連の臨時総会では、193カ国の国連加盟国の中で141カ国がロシアによるウクライナへの戦争は、国連憲章に違反したものだと断定し、さらに次の臨時総会では140カ国が、国際人道法違反の戦争だと断定した。この2つの決議に世界の圧倒的多数の国の判断がある。ロシアによるウクライナへの戦争は、圧倒的多数の国が侵略戦争だと判断して、国際協調が強まっている。日本のメディアも、こう判断した世界各国の断定を、自分の目で確かめ、ロシアによる国際法違反の侵略戦争だと書き、ロシアの戦争を告発すべきだと思っている。ジャーナリストの志葉玲さんは、ウクライナの現地に入り、ブチャからもレポートを書き、ロシアの侵略戦争を告発している。こういう態度をメディアがとるのは当たり前ではないだろうか。

日本のメディアが両論併記で戦争のことを書いているので、どっちもどっち論がかなり出ている。圧倒的な事実で侵略戦争を告発しない日本のメディアの書き方が、このような根拠のないどっちもどっち論を生み出していると言えるだろう。日本のメディアは、ジャーナリストとしての責任を果たせていない。

ロシアのプーチン大統領やロシア政府の発表を聞いていると、「よく言うよ」と思う。圧倒的にウクライナが破壊され、都市が瓦礫となっているのに、ロシア軍は民間人を殺していないと言い、民間人殺害の話はウクライナ側のでっち上げだと言っている。そして、この報道をロシア国民の圧倒的多数が支持し、プーチン大統領の支持率は80%を超えている。
このロシア国民の姿を見ていると、戦前の日本の状況と重なってくる。
ぼくは戦争が終わって15年経って生まれた人間だが、戦争が終わったとき20歳だった母の話を何度も聞かされてきた。母は日本が戦争に負けるとは思っておらず、玉音放送を聞いて泣いていた。母は小学校の教師だった。日本が侵略戦争の果てに敗北したことを母は知らなかった。
ロシア国民の現在の状況は、母が生きていた昭和20年、1945年の日本と酷似しているのではないだろうか。
同時に、ロシア国民の状況は、現在の日本の状況にもぴったり重なる。私たちも、ロシア国民と同じように、日本の現実の中で世論誘導され、洗脳されているのではないだろうか。

日本政府は、敵基地攻撃能力を自衛隊に保有させ、相手国の中枢都市をもたたく力を保有したいという議論が行われている。敵基地攻撃能力の発動は、相手国が攻めてこないときに行使されるものだという。この攻撃を実行すれば、ロシアが行ったウクライナ侵略戦争と同じになる。こういう議論は、日本政治のプーチン化を如実に表していると思うが、日本の国会でこのような議論が行われつつあることを、どれだけ多くの日本人が知っているのだろう。
世界の中で一番嫌いな政治家はプーチンという状況になっているが、この日本で多くのプーチンが誕生しつつある現実に気がついていないというのは、いったいどのような現象なのか。

核兵器の共有論まで出ている。アメリカの核兵器を日本が共有させてもらうという論理は、日本の米軍基地と自衛隊基地に核兵器を配備することを意味する。これは結局、アメリカの核兵器使用にお墨付きを与えるだけのものであり、中国と北朝鮮との間で、日本が核兵器を配備して構えることを意味する。

日本は、核不拡散条約に参加している。核兵器を持つことのできる国は世界で5つだけであり、それ以外の国が核兵器を持つことを禁じているこの条約は、新たに核兵器を持つ国が誕生することを無条件で脅威の増大だととらえている。日本も核兵器を持とうという議論は、新たな脅威が東アジアで生まれ、緊張がさらに激化することを意味する。こういうことになることさえ、きちんと指摘されないまま、核兵器の共有論が一定の力を持っている。この現象も日本のプーチン化の一つだろう。

ロシア国民が洗脳されているような状況に見えるニュースを見て、日本も同じではないかと思うのは、極端な見方ではないと思っているのだが、いかがだろうか。


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雑感

Posted by 東芝 弘明