議長選挙、副議長選挙の結果

雑感

松岡宏行議員が新議長に

議会改選から2年経ったので、申し合わせにより議長、副議長の辞任、委員会委員の辞任、一部事務組合や広域連合議員の辞任を基本にして、議会の構成替えが行われた。その結果、新議長に松岡宏行議員、新副議長に藤本憲一議員が選出された。
議長選挙は、投票総数12人(議員定数13人だが1人死去による欠員がある)が投票し、松岡宏行議員7票、溝北好一議員5票という結果だった。立候補を表明したのは松岡宏行議員。溝北好一議員は、この2年間の議長であり辞任された議員。
かつらぎ町議会は、法的には立候補制をとっていない議会内の選挙に対し、申し合わせにより立候補を表明して、投票することになっている。もちろん、立候補制ではないので立候補していない議員に投票してもいい。辞任した溝北議員は、立候補しなかったが12票の内、5票入ったことになる。
副議長選挙は、藤本憲一議員のみが立候補した。その結果、藤本憲一議員10票、山下慎二議員1票、白票1という結果になった。

松岡議員は、立候補の挨拶で、住民のための議会の実現を推進することを最初に表明し、この中で二元代表制に触れ、町からの提案(おそらく議案のことだろう)に対してイエス・ノーだけではなく、議員には政策立案、政策能力が問われており、これを受け身ではなく前向きに捉えるという考え方を表明した上で、次の3点の具体的公約を表明した。
①議会改選がある2年後を目安に行政と議会のデジタル化・ペーパーレス化を実現したい。
②議会に予算委員会を設置したい。予算が付託されてから予算委員会で審議することになっているが、実態にあった中でまちづくりに発展できたらと考える。
③10年経った通年議会は、10年前に想定されていた議会と今の議会とはかけ離れている。議会の日程は130日を超えている。通年議会の実施は町当局と住民が一番恩恵を受けている。この10年は大きな意味をもっている。総括しながら、どのような形で取り組んで行くのか、議員の条件整備にも取り組む必要がある。

議長になろうとする議員が、具体的な議会改革の項目を明らかにして「公約」を明らかにするのは、かつらぎ町議会では初めてのことだった。異例の決意表明だと言ってもいい。
議長には、議会全体を代表する役割を担っているので、議員が活動しやすいよう役割を果たすこと、町当局と議会との橋渡しの役割があるので、この橋渡しの役割を果たしながら、二元代表制のもとで活動を行うこと、議会と行政のかつらぎ町議会を代表して、いわば外交をおこなうこと、という3点の役割がある。今まで議長選挙に立候補した議員は、多かれ少なかれ、この3点の議長の役割に触れて態度表明をしてきたが、松岡議員の挨拶は、このような議長の役割からは、かなり形の違うものだった。

議員に対して具体的に明らかにした3点の公約は、議長を座長とする全員協議会で提案することになるだろう。全員協議会でこれら3点のことを議論しながら進めるというのも一つの方法だが、今までは、所管の事務を持っている委員会で検討を行うのか、それとも検討内容を明確にした特別委員会をつくって議論をすることになる。まずは、議長が表明した3つの点について、議会全体が検討を行うのかどうか。議論はここから始まる。ぼくは、個人的には、議長がこのような具体的公約を掲げると、議会全体を振り回すことになるので、議会改革がボトムアップにならないので、すべきではないと思っている。

行政と議会のデジタル化についての疑問

こういうことを前提にして、ぼくの考えをデジタル化に絞って書いておきたい。
行政と議会のデジタル化・ペーパーレス化は、ひとつのブームであるかのように自治体で取り組まれている。ただし、行政全体のデジタル化を求めるのであれば、あと2年という期限を切って議会の側から提案することには、違和感を感じる。行政のデジタル化・ペーパーレス化は、過去のデータ、資料も含めて行わないといけない。今まで永久保存の文書は、紙ベースで管理されてきた。本当の意味でのデジタル化の一つは、これをデジタル化するということだろう。これには膨大な時間が必要になる。

現在進行形の事務について、全てをデジタル化するというのも、きちんとした制度設計が必要になる。文書は最終的には、全てPDF化することになるが、どう具体的にファイルをPDF化するかということが技術的に問われる。
PDFファイルは、Adobeシステムの1つのファイル形式。これは、文書の容量を減らし、かつテキストデータや画像も再現できるもの。プロ用の印刷にも適用できるファイル形式でもある。しかし、クオリティ高くPDF化するには、コンピュータで取り扱うフォントの統一が欠かせない。職員に使用できるフォントのリストを明示し、使ってはならないフォントの扱いを明確にして、全てのフォントを管理しないと安定したPDF化はできない。画像についても、その取り扱いの基準が必要になる。
もちろん、過去のファイルを全部、この基準で作り替えることはできない。デジタルファイルで作られているものでも、過去のファイルのクオリティを統一するのは困難だろう。これを始めるといくらあっても時間が足りない。
紙ベースで残っているファイルは、サイズがまちまち。これをどうやってデジタル化するかは悩ましい。結局、最終的にはドキュメントプロセッサという機械で紙の資料をPDF化することになるが、これを行うためには、人と時間が必要になる。

すべての永久保存資料を中心にデジタル化することには、膨大な予算と時間が必要になるので、一度にデジタル化はできない。全ての自治体は、どこまで遡ってデジタル化を図るのか、ということで線を引くことになる。
同時に現在進行形の事務については、先ほど書いたフォントの統一を基本としたデータの作成を、全ての職員に求めることになる。無料のフォントを使うとデジタルデータを管理できない問題が生じるので、最も確実なのは、行政のパソコンに入っているフォントをすべて有料のものを中心に置き換えることが考えられる。これには、膨大な予算が必要になる。
現在進行形のデータの中には、個人情報が数多く含まれている。職員の事務上、権限を持っているセクションの職員は、職員が作成した資料やデータを共有して活用できるようにしなければならない。これが自由自在にできないとデジタル化する意味はない。

情報公開条例との関係で言えば、職員が個人的に業務上作成した資料の扱いが、課題になってきた。本町は、基本的にこれらの資料を公文書扱いにはしていない。しかし、これらの関係文書を公文書にしている自治体は数多い。住民との権利菊の関係で問題が生じたとき、これらの資料を開示してもらわないと住民の権利を守れない。この問題があるので、先進的な自治体は、職員が職務上作成したメモも公文書とし、情報公開の対象にしている。
有名なのは赤木ファイルと呼ばれている森友問題のファイル。こういう個人的なファイルが本庁にも存在した場合、個人的に作成したこれらの資料を、かつらぎ町は公文書扱いにするだろうか。

こういうものの取り扱いも含めて、どこまで自在に共有できるのかということと、どこまで議員などの住民に(議員個人に権限はない。住民と同じ権利しかない)情報を開示するのかということを明確にする必要がある。議員がデジタル化によって恩恵を受けるとすれば、議員が貸与されたタブレットや自分のパソコンによって、行政の情報を自由に引き出せるようにするということだろう。ここまで進まないとデジタル化の意味はないと思われる。

データや資料の公開と非公開を切り分けるためには、システムの改修とともに、文書管理の厳格なルールが必要になる。IDによって分けるということも考えられるが、これで果たしてセキュリティの安全が保たれるのか。これは、専門的な領域に踏み込まないと分からない。

議会提出の議案や資料だけをデジタル化して、議会のデジタル化としている議会は多い。しかし、このようなデジタル化は、本物のデジタル化ではない。この本物でないデジタル化は簡単にできる。紙ベースで資料をPDF化すれば、一通りのデジタル化は実現できる。これだけを実現している議会も多い。松岡議員は、行政と議会のデジタル化を求めたので、議会の資料だけをデジタル化することは求めていないと思われる。

松岡議員による2年後を目処に行政と議会のデジタル化を実現したいというのは、何をイメージしているのだろう。今まで議会は、行政の事務のデジタル化が実現しないうちは、議会のデジタル化はしないという合意があった。合意していたのは、これだけなので、行政が本格的にデジタル化するために必要な課題というものは全く見えていない。
行政がデジタル化の課題と日程を全く明らかにしていないし、庁舎建設の課題が現実の日程に上っている中で、後2年後に行政と議会のデジタル化を掲げるのは、乱暴だろう。普通は、かつらぎ町当局に質問しながらデジタル化の課題を明らかにして、それが本当に最短でできるのかどうか、こういう点を明らかにしないと、簡単にデジタル化は口にできないと思うのだが、いかがだろうか。

そういうリサーチや研究を全くしないで、2年後を目処に行政と議会の資料のデジタル化をという目標を掲げるのはどうかと思う。思いつきを公約にしてはならない。かつらぎ町は、新しい庁舎建設を課題にしている。この具体的な動きがある中で、古い庁舎のまま、行政と議会のデジタル化を掲げるのにも疑問がある。デジタル化には、フォントの購入やシステム改修も含め、かなりの負担が行政にかかってくる。やってしまったら二重投資になってしまう可能性がある。新しい庁舎の下で、十分考え抜いたシステムの下でのデジタル化、これを考えるべきではないだろうか。


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雑感

Posted by 東芝 弘明