証拠隠滅は、歴史偽造の最大の力

雑感

従軍慰安婦の問題でコメント欄に質問があった。書いた記事は2014年であり、少し記憶が薄れていたので、改めて党の見解などを読み直した。
資料がないという話がある。
公文書に関わる本を読んでいると、日本という国は、戦争が終わったとき、ものすごく大量に多くの公文書を処分したと書かれていた。たとえば、それぞれの市町村で第2次世界大戦の際に何人戦死したのかということでさえ、はっきりしない。かつらぎ町の場合は、戦没者追悼式は、日清・日露戦争のときまで遡って追悼されている。

どうしてこういう状況なのだろうか。
第2次世界大戦の時、市町村の役場は、誰がいつ召集されたのかを全部把握していた。しかし、この戦争に深く関わっている資料は、ほとんど残されていない。昭和20年8月18日、大本営は、市町村役場に対し、「徴兵事務などすべての戦時中の軍事に関する書類をいっさい処分せよ」という趣旨の命令を出している。ほとんどの市町村は、この命令に従って焼却処分を行ってる。召集礼状も戦死公報も発行していたのは市町村役場だったから、これらの資料が全部残されていたら、全ての市町村の戦死者が年代を追って全部把握できたし、市町村ごとにどこに行かされたのか、どこで亡くなった(とされた)のかも明らかになっただろうと思われる。
この指示に従わなかった職員が、書類を自分の蔵に隠して保存した例がある。それが長野県大町市の例だ。残されていた200冊に上る資料にまつわる話をドキュメンタリーにした映画「大本営最後の指令〜残された戦時機密資料が語るもの〜」があるという。

国民の召集令状などの兵事資料を命令一つで焼却処分にさせた感覚は、理解しがたい。この記録が残されていたら軍人恩給の調査にも大いに役に立っただろうし、どこで戦死したのか分からなくなっている人々の痕跡を掘り起こす力にもなっただろう。国民の生死に関わる重要な資料を廃棄させる感覚には、人間の命を何とも思わない姿勢がにじみ出ている。大本営が焼却を命じたのは、戦争を遂行した幹部たちに責任が及ばないようにというものに他ならない。

歴史修正主義者たちは、最近、現在進行形の事件でさえ、証拠の隠滅、改ざん、ねつ造などを積み重ねている。この体質は、戦争に負けた日本政府が資料を大量に処分したことと繋がってる。従軍慰安婦や731部隊、南京虐殺など、歴史の大量偽造が繰り返されているが、その根底には資料が残されていないという問題が横たわっている。歴史に対する無責任な発言を支えているのは、戦前の戦争遂行勢力による証拠隠滅にあるといえるのではないだろうか。

従軍慰安婦の問題では、強制連行の資料は見つかっていない。だから強制連行はなかった=従軍慰安婦問題はなかった。あったのは公娼制度であって、あれは合法的な商売だった。などという言説が吹聴されている。吉田発言がねつ造だったことをもって、従軍慰安婦ということ自体がねつ造だという論調もある。
大本営で活動していた人々が生きていたら、「証拠を処分して本当によかったなあ、おい」と語ったかも知れない。
今の政権は、1945年8月18日、兵事資料を処分せよという命令を発した大本営と本質的には違いがない。

雑感

Posted by 東芝 弘明