1億3300万円の公有地売却、予算の修正が行われた
本会議の前に議員全員協議会が開催された。〝予算の中にある公有地売却の予算約1億3300万円をゼロにする修正をしたい〟という、町当局からの申し出に基づく会議だった。この会議の中で、町当局は、販売先の企業が決まっている状況で、用地買収に必要だった経費2億5000万円程度の内、1億2000万円ほどの経費を値引きし、1億3300万円で販売することは、利益供与に当たるという認識を示した。
町長や副町長と話し合い、予算に計上している笠田中の企業用地の売却には賛成できないことを明らかにしてきた。町側は最初、「これは値引きではなく先行投資だ。ゆくゆくは固定資産税などで返ってくる」というような説明を行っていたが、途中から一転して予算の修正を行いたいという態度になった。
予算の修正に対して、町当局が議員全員協議会に明らかにした見解は、「企業との側で用地の販売についての協議が整っていない」というものだった。令和5年2月1日に緩やかな協定が結ばれているが、アクアイグニスとミモナとの間で、用地販売についての協議や仮契約などは何もない。なぜこんなことになっているのかについては、納得のいく説明はなされなかった。しかも、用地買収当時、担当課長が、企業の側からの申し出によって用地買収を行う(令和4年9月)、アクアイグニスとミモナの社長による申し出によって用地買収を行っている(令和4年12月、東芝による一般質問への答弁)が繰り返し答弁してきたのに、今になって今回の用地買収は、町長による企業の側への働きかけによって始まった用地買収だったと訂正した。
用地買収を行う段階で、用地買収の仕方についての具体的な協議が何もないというのは、極めて異常なことだ。しかも、今回のような販売の仕方に対して、町長局の中で「このような販売をしていいのだろうか」という疑問や検討がなされておらず、立木補償の分や分筆登記の費用は、企業側に転嫁しないという判断が、どこでなされたのかは明らかにならなかった。
質問しても、まともな答弁が返ってこない。これは、かつらぎ町のような田舎の自治体でも、国会でも同じなのかと思ってしまう。
今回は、当局による予算の修正という申し出を受け、議員に連絡があった。ぼくは、予算に対し大きな問題があるということは、先週開かれた全員協議会で発言させてもらい、産業観光課に提出してもらった用地買収に必要だった経費を示す資料については、議長の許可を得て議員に配布してもらっていた。
全員協議会で当局に対して質疑を行った議員は、ぼくを含めて4人だった。今回のこの問題に対して、重要な問題だという認識をもって動いていた議員は何人いただろうか。1億2000万円程度の値引きを行おうとしているこの問題に対して、ご無理ごもっともという態度を示すのか、それとも問題だという態度を示すのか。黙っていた議員が何をどう考えていたのかはよく分からない。当局に対する質疑のあと、議員間討議が行われると、議員の認識は明らかになるのだけれど、まだかつらぎ町議会はそういうことになっていない。ここに議会運営上の課題がある。
ぼくは、本会議の質疑では、以下の3点を指摘して質疑を行った。
- 笠田中の企業用地を売却するときは2億5000万円を超える経費で販売することになるのか。
- 最初からアクアイグニスとミモナに販売することが明確になっているケースで、用地買収の費用を相手に請求しないで販売することは、利益供与に当たるのか。
- 用地買収の予算が補正予算に組まれた令和4年9月から2年半の時間の中で、町当局と企業側の協議はどれぐらい行われたのか。
この問いに対し、用地買収に必要だった経費で販売する。値引き販売は利益供与に当たる。協議は数回程度と参事が答弁した。ぼくは、予算質疑の中で、ここまで用地買収から販売までの事業の中で、企業側との話し合いもまともに行われていない事業をみると、疑問を持たざるを得ない。こういう事業の進め方をしているのであれば、うまく行く事業もうまく行かない。議会は疑いの目をもって事業の進捗を監視しなければならない。という趣旨の発言もさせていただいた。
アクアイグニスとミモナによる企業誘致の事業は、かつらぎ町の歴史からいえば、最大の事業になる。ぼくは、企業側の投資額は100億円をはるかに超えるだろうと思っている。それだけに明確な計画がなければ、成功しないと思っている。
年間100万人の集客が見込まれ、雇用も400人確保できる。温泉、ホテル、一流のパティシエによる洋菓子店、本屋、農産物の物産販売などができると語られてきた。しかし、2年半前に明らかにされていたその夢は、まったく具体化されていない。夢のような絵は描かれたが、誰も色を塗っていないまま、用地の販売だけしようとしているということだ。このようなやり方で事業というものは進むのが「常識」なんだろうか。
今回、問題点を指摘し、予算を取り下げてもらったのはよかったと思う。このまま突っ込んでいき、議会を通過していたら、利益供与に当局も議会も手を染めることになる。ぼくは、この事態を避けるために予算の組替動議を作成して、その案を議会事務局に手渡していた。
予算全体の質疑を深く準備したかったのに、この問題にかなりの時間をさくこととなった。議会は生き物なので、こういう問題が発生したら、力を尽くすことが求められる。自分の疑問は果たして正しいのか。自分の目の前でどういう性格の事態が生じているのか。まずはこれを見極める必要がある。事業の本質を見極めることにかなりの時間を必要とした。その上で何をどうすべきなのか。どのような予算組替動議を出すべきなのか。出した後議会運営をどうすべきなのか。考えるべきことは多岐に渡った。
そういう努力を行ってもこの予算が通過したら、住民監査請求や予算執行についての是非を問う運動をどうしようかと考え始めていた。そういう事態にならなかったのでホッとした。



