普遍的福祉の実現を

雑感

合格お守り

受験競争のない国も多いなか、日本は受験競争社会を作ってきた。高校入試でさえ、和歌山県では学区制が撤廃され、進学を重視した私立中学校も現れ、公立でも中高一貫校が作られて、複数の選択肢が受験に組み込まれて、少子化なのに競争が激化した。
言い方を変えれば、少子化が進むことを睨んで、さらに競争が起こるように複数の選択肢が生まれるようにした。これは明らかに教育界にさらなる競争を持ち込んだということだ。

日本社会の中で競争は当たり前。日本は競争する社会になっている。
これは、圧倒的多数の人が認めることではないだろうか。競争社会と自己責任論とは、つながっている。また競争社会と自己責任論は、徹底的に選別する福祉の制度ともつながっている。

相模原殺傷事件が起こってから1か月。自己責任論と福祉の問題について考えてきた。
日本社会の福祉の根底には、生活保護制度の問題がある。日本の生活保護制度は、全ての国民と結びついているものではなく、どうしても生活保護が必要な人にのみ適用される制度となっている。生活保護を受給するためには、収入だけでではなく預貯金や資産(たとえばオンボロの車も含めて)も受給できるかどうかの条件になっている。また収入が少なくても、扶養関係にある親族が資金援助する意思があり、援助する資金によっては、生活保護受給を認めないケースも生まれる。
「必要な人に対して必要最小限度の福祉を」
これが日本の福祉の考え方に座っている。

その結果、何が生まれているのか。生活保護基準以下の人々の中で生活保護を受給しないまま、生活している人が数多く存在しているという現実がある。こうなってくると生活保護制度は、社会保障の根底に存在して、「健康で文化的な最小限度の生活を営む権利を有する」という憲法25条を守るものにならなくなる。
生活保護を受給するのは恥ずかしいとか、生活保護は受けたくないとかいう意識は、徹底的に選別して福祉を行っている福祉の「選別主義」と自己責任論から生まれている。

これに対し、ヨーロッパの福祉は、「選別主義」から「普遍主義」へと移行してきた。「普遍主義」という方向への福祉の改革は、日本型福祉国家の再建という課題に直結するものであり、小さな政府から大きな政府への転換になるものだ。
このことを鮮明に書いている人がいた。井上伸さんという方だ。この人は、日本国家公務員労働組合連合会(略称=国公労連)本部書記を務めている。井上伸さんのブログから引用させていただく。
ブログの題名は「『本当に困っている人』だけを選別する福祉は『本当に困っている人』も救えない – すべての人に『生きづらさ』強いる福祉のパラドクスと生活保護バッシングブログはこちらという少し長いものだった。この記事の中で、唐鎌直義立命館大学教授が「福祉のパラドクス」について、講演で語ったことを井上さんがまとめている。

「そもそも、日本には生活保護を受給することに対する根強いスティグマ(恥辱感)があります。ヨーロッパでは、このスティグマをなくすために、福祉を「選別主義」から「普遍主義」へと転換してきました。「普遍主義」の福祉というのは誰もが当たり前のように受けられる公的サービスです。たとえば日本ならば「義務教育」を受けることは当たり前の「普遍主義」になっていますから誰もスティグマを感じたりしないわけです。」
「フランスにはRMIという「参入最低限所得制度」があります。「参入」というのは、労働市場への「参入」を意味していて、劣悪な労働条件の仕事には就かないことを選択可能にする国が最低生活を保障する福祉制度です。とりわけ、若者の労働市場への「参入」を支える所得保障制度は、雇用の劣化をストップさせる効果を持つと同時に、「失業者」も、所得保障による「保護受給者」も、いま働いている労働者の雇用劣化をストップさせるという一つの社会的地位として受け容れる社会をつくっているわけです。」

 

日本でも、生活保護制度が、社会に参加するために所得補償をおこなう制度として、全ての人々に開かれているものであれば、生活保護受給に対する恥辱感はなくなるだろう。そういう福祉制度ができれば、失業者も高齢者で年金の少ない方も、障害者もみんな所得補償が実現する。そうなれば、この制度は普遍的福祉を支え、国民生活を支える制度となる。
生活保護者へのバッシングや障害者への差別を生み出さない社会を作るためには、全ての国民に開かれた普遍的福祉を実現する必要がある。自己責任論で徹底的に個人責任を問い、社会的弱者に対して攻撃をしかけるような社会への転換を実現するために、普遍的福祉の必要性を主張し、さまざまな制度をその方向に向けて改善していかなければならない。

生活保護者に対して、働く意欲のない怠け者だという批判もある。このような考え方に対しては、また別の日に書いてみたい。

雑感

Posted by 東芝 弘明