出来事

%e3%82%86%e3%82%81%e5%85%ad

「おーい、間違えて靴履いてないか」
2階の廊下の手すりにもたれてポールとポールの間に足を入れていたら、下から声がかかった。
「はい、間違えていません」
靴を見てから返事をした。

それから数日が経った。広域の議会があったので革靴を履いて、車に乗り込んだ。台風が来るので会議が延期されるかも知れないといっていたのに、雨が断続的に降るだけの拍子抜けの天気になった。
議会が終了して、下駄箱に入れてあった靴を履いたときに、妙に違和感があった。
「あれ?」
これ自分の靴じゃないかも?、
疑問がムクムク盛り上がってきた。まるで入道雲のようだ。
靴の裏を見てみた。
「えっ、こんな模様だだったか?」
履きごごちも窮屈な感じがした。
あのとき、1階から声がかかって、靴を履き間違えていないか、声をかけられたよな。あれはどこだったか、何月何日だったか。思い出しても全く記憶をたどることができなかった。

自宅に戻ってiPhoneのカレンダーを繰ってみた。記憶にある2階の手すりや見下ろしていた1階の部屋の感じを思い出しながら、その日がいつだったか特定しようと曜日を過去に向かって追いかけた。どんなに記憶をたどっていっても、そういう場所に行った形跡がない。形跡がないだけでなく、そういう場所に行っていないのに、革靴を履いて議会に行った日が数日前に前に存在した。

「あれ?」
1階から声をかけられたシーンがものすごくあいまいになってきた。あんな場所にぼくは行っていないし、そんなシーンもなかったのではないか。もう一度記憶を探る。鮮明だったはずのシーンがぼやけてきた。そうか、あれは夢だったのか。
履き間違えてきたと思っていた靴は、自分の靴そのものだった。

「おーい、間違えて靴履いてないか」
こちらの方が夢だった。


にほんブログ村 地域生活(街) 関西ブログ 和歌山県情報へにほんブログ村 政治ブログへにほんブログ村 哲学・思想ブログ 哲学へにほんブログ村 地域生活(街) 関西ブログへブログランキング・にほんブログ村へ

出来事

Posted by 東芝 弘明