溶融処理は危険、高野口町民の安全が脅かされる 2005年11月10日(木)

かつらぎ町議会

10月27日、橋本周辺広域市町村圏組合の焼却処理方式選定委員会は、「焼却処理方式の検討結果について(答申)」という答申をおこなった。
この答申は次のように述べている。

評価度数点の最も高い「ストーカ方式+灰溶融方式」が最適となりました。さらにその後、ストーカ方式(灰溶融なし)についても比較検討したところ、
①「安全性・安定性・環境保全性」等について、十分施設整備のコンセプトを満足できること。
②処理残渣の有効利用については、今回計画施設規模が比較的小さいために製造されるスラグ量が少なく、土木資材等での利用先の確保が難しいこと、溶融しないことによる最終処分量の増加に対しても処分先の確保ができること。
以上の理由により、灰溶融炉を付帯しない「ストーカ式」としても貴組合に十分適用可能であると判断しました。


これは、いわゆる両論併記だが、明らかに「ストーカ方式+灰溶融方式」の方が上位に位置づけられている。
ストーカ炉は、30億円で建設可能だという。ストーカ炉の場合、燃えたあとの灰は、フェニックスと呼ばれる大阪湾にある処理場に運ばれる。灰になったあとの処理経費は、運賃と投入にかかるコストだけだ。
「ストーカ式+灰溶融方式」は、ストーカ炉で燃やしてできた灰を、さらに灰溶融処理施設に投入し1500度以上の高温でどろどろに溶かし(=溶融:溶鉱炉のようなもの)スラグ化するものである。ストーカ炉30億円、灰溶融処理施設30億円、計60億円の建設コストがかかり、しかもランニングコストには、多くの人件費と燃料費、維持経費で年間数億円の費用が必要になるという。
灰は、燃えかすだから通常の温度では燃えない。これを高温処理するためには燃料が必要になる。溶鉱炉の場合はFe(鉄)=原子という極めて単純な物質を高温で溶かすだけだが、灰溶融処理施設は、どんな物質が入っているか分からない灰を高温で溶かすことになる。
Feを溶融するのとは比較ができない理由はここにある。
灰溶融処理施設も、直接溶融と呼ばれる溶融炉(ごみを直接高温で溶かす炉)も数多くの爆発事故を起こし、問題視されている。しかも爆発原因が分からない場合もある。
高温でさまざまな物質である灰を溶かすのは危険だということだ。
しかも、最近の研究では、高温処理によって重金属が生成されるという指摘がある。
具体的には、高温で処理されることにより水銀等の重金属類が生成され、気化し、煙突から排出される危険性があるということだ。
また、1000度以上の高温で塩化ビニルを燃やすとベンツアントロン、ベンツCシノリンという発ガン性・環境ホルモン作用を持つ可能性が高い物質が排出されたという報告がある。
さらに、多環芳香族炭化水素(動物実験で発ガン性・発ガン促進性を示すものが多く報告されている)や強毒素のニトロ多環芳香族炭化水素という物質まで生成されるという実験結果がある。
ダイオキシン対策のために高温処理を促進したが、これが新たな環境汚染を引き起こす──溶融処理は、悪魔を押さえつけるために火の神を使い、その結果、数多くの悪魔を環境に解き放つものなのかも知れない。
環境汚染問題をいま、なぜ断定的に語れないのか。その理由ははっきりしている。それは、溶融処理施設の歴史が浅く、公害問題がまだ実証的に明らかにできないからだ。
しかし、化学実験では、高温処理によってさまざまな重金属や高分子化合物が生成されることが明らかになっているだから、溶融処理に対しては慎重にならざるをえないのではないだろうか。
それとも、高野口町の住民を対象に、灰溶融処理施設による環境汚染、人体への影響を検証しようとでもいうのだろうか。
灰溶融処理施設は、30億円の建設費が必要であるといわれている。焼却処理方式選定委員会の議論では、爆発事故が多発したことも指摘され、建設コスト、ランニングコストの問題も明らかにされて、ストーカ炉を求める声が大きくなっていったようだ。しかし、地元の高野口町は、あくまでも灰溶融施設にこだわり、最後までこのシステムで建設することを求めたという。
地方自治体はいま、極めて深刻な財政難に陥りつつある。そのときに、コスト論をまともに議論せず、炉の建設だけで60億円もかけるのは理解できない。
地元の高野口町は、大野地区で説明会を開き、「ストーカ炉+灰溶融処理施設」で合意を取り付けようとしている。
30億円でストーカ炉だけを作るよりも、60億円かけた方が危険が増大するのに、灰溶融処理施設の方がより安全だと説明するとすれば、それは異常としかいいようがない。
広域のごみ処理施設は、溶融処理は必須という方針の下で動いてきた。それは、国の方針が溶融固化を強力に推進したからだ。
推進の理由は2つあった。
(1)溶融処理によって灰をスラグ化し最終処分場を延命化する、
(2)ダイオキシン対策のためには24時間連続運転・高温処理が有効
国は、この方針を徹底するために、溶融処理でなければ補助金を出さないという方針を採用した。この方針は、法的根拠のないもので、国の担当課長の指導とでもいうべきものだ。
今日、この方針は事実上、変更されたといってよい。変更せざるをえなかった要因は2つある。
1つは、ダイオキシン対策の技術は進み、溶融処理しないストーカ炉でもダイオキシン対策が図れるようになったということ。
もう1つは、溶融処理方式では、事故が相次ぎ、技術の未熟さが露呈し、安全性に疑問が強く出されるようになったということ。だ。
環境省による焼却炉の建設補助費はなくなり、この制度は交付金制度に変更された。この変更時に溶融処理は必須という方針も変更された。
しかし、橋本周辺広域市町村圏組合の方針は、変更されないまま、焼却処理方式選定委員会が開かれた。高野口町が灰溶融処理施設に最後までこだわった理由の1つは、溶融処理は必須という広域の方針にあったようだ。つまり「錦の御旗」。
合併を目前に控えて、莫大な建設費を巡って攻防が続いている。
広域のごみ処理施設建設は、用地の買収、進入路建設、用地の造成、焼却処理施設の建設、リサイクルプラザの建設という巨大なプロジェクトである。地元に10億円の周辺整備をという話も語られている。
ごみ問題は、本来、家庭から排出されるごみの量と質を見極め、分別リサイクルの方針を定め、資源化計画を打ち立てて、できるだけ少ないごみを焼却処理するというものである。広域のごみ処理方針には、この最も肝心な部分で統一認識がない。
一般廃棄物とは具体的にどのような質を持ったごみなのか、まず各自治体は、この認識を一致させなければならない。
同じ一般廃棄物のなのに、具体的な内容は自治体によって食い違っている。
同じ言葉を使いながら、内容の違うごみの処理を話し合っている。
一般廃棄物の内容を一致させた上で、何を資源として再生するのか、どのようなリサイクルシステムを構築するのか。議論するべきなのだ。そうしないと、本当の意味で、「分ければ資源、混ぜればごみ」というスローガンは実現しない。
建設問題を中心に議論が集中し、肝心のごみ処理の基本が吹っ飛んでしまう議論は、処理施設先にありきのへんてこな議論だ。
「悪魔が来たりて笛を吹く」──そんな夢は見たくない。

かつらぎ町議会

Posted by 東芝 弘明