報告に対する 「ん?」

雑感

議会の初日。毎回思うが提案説明の時間がどんどん短くなっている。今回から決算の各議案について、水道と下水の会計の決算案だけが決算書に基づいての説明だったが、あとの決算案は、参考資料に基づいて概要を説明しただけで、事項別明細書にしたがっての説明はなくなってしまった。これで議員が決算を理解できることはない。

議員に対して説明をすることは、住民に対して説明しているに等しい。住民が聞いていてもさっぱり分からない説明というのは、説明とは呼べないと思うがいかがだろうか。提案説明については、いかにして住民に対し説明責任を果たすのかという観点で検討すべきだと思う。

説明責任の在り方について、実は議論できる場がない。説明の仕方は行政当局がどう説明するのかということで完結する。この間の変化は全て、説明時間を短縮するものばかりだった。

議会に諮られたのは、監査委員の報告に対する質疑は、監査委員にとっては酷なのでなくしてほしいというものだった。これは議会が受け入れたものだ。したがって監査委員に対する質疑がなくなったのは致し方ない。ただ、監査委員の報告を読むとうん?という疑問がいくつか出てくる。
一つは税に関わる問題。滞納について監査委員の報告は「和歌山地方税回収機構に移管できるものは速やかに移管されたい」と書いている。この書き方には、滞納者の生活への配慮を感じない。
地方自治体は、全ての住民を対象に仕事を行っている。しかし、住民の中には貧困状態の中で生活の苦しい人がいる。税金を免除してもらわなければ生活が成り立たない事案があり、減免の制度もある。
問題は、施策を十分に理解していない住民が、救済されるべきなのに救済されず、苦しんでいるケースがある。新自由主義的に言えば、行政の施策を理解していないのは本人の責任、自己責任だということだろう。きちんと救済してほしければ、自分で調べなさい。こういうことだろう。

しかし、複雑な社会制度を十分理解しているのは専門家しかいない。生活苦の中で自分の時間さえなく働いて、それでも事態が改善せず税金を滞納するケースはある。税務行政のサービスの基本は、文書の送付を通じて対応を進めるということになっており、届けている文書を見ない人は、その人が悪いということになる。滞納の通知を見ても払えないから見ないという人は、差し押さえというところまで行く。そうなると金融財産を押さえることも起こる。文書を見ないでほったらかしにしている人は悪質滞納者ということになる。そういう人は地方税回収機構に事務を移管することもある。

地方自治体の仕事には、住民の生活に寄り添い、支援するという側面がある。制度も支援を具体化している。行政の施策にアクセスできないで苦しんでいる人々に対しては、支援の手を差し伸べる必要がある。こういう人のサポートは、がんじがらめになって絡まっている糸を解きほぐすことが必要になる。時間をかけて絡まった糸は、時間をかけないとほぐれない。絡まった糸をほぐさないと制度の活用にもたどり着けない。たどり着けない一定の期間は、財政的な支援も含め救済しないとどうにもならない。

行政から逃げずに相談している人々は、むげに足蹴にされない(足蹴にする自治体では命に関わる事案が発生している)。足蹴にされないように議員が役割を果たすケースもある。行政職員も「帯に長し襷に短し」という制度の下で手を差し伸べたいのに難しいという狭間にある。職員の悩みや苦しみもここにある。監査委員という立場の人は、生活苦に陥っている人々の実際の苦しみを知る人であってほしい。議員が監査委員になっているのは、こういう部分を見るべきだということであるかも知れない。

税の問題で驚いたのは、「未収金を回収するには、専門部署を設置し、弁護士等知識をもった外部の方を配置するなど、従来の取り組みとは違った手法を取り入れ滞納措置にあたるよう検討されたい」という指摘だった。税務吏員の権限を知った上で、こういう指摘をしているのだろうか。この指摘に対しては、行政の見解を聞いてみたい。

監査委員のマイナンバーカードについての指摘には驚いた。「引き続き新たな手法も検討されながら交付率100%を目指し、マイナンバーカードの普及に努められたい」と書いてある。これは、まずマイナンバーカード取得が制度としては任意であり、取得しない自由が住民にあることを踏まえていない。取得しない人中には、情報漏洩をおそれている人もいる。国家公務員の取得率が低いという指摘もある。マイナ保険証の活用は11%しかない。こういう状況があるにもかかわらず、交付率100%を求めるのは、マイナンバーを巡る問題を知らなすぎるのではないだろうか。
事実を把握し課題を検討し指摘しないと話が空中に浮いてしまう。

監査委員の指摘事項は、決算に関わる重要な指摘だとは思う。本人にきけないので、決算の中で、いったい監査委員とかつらぎ町はどのようなやり取りをしているのか、聞く必要がある。


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雑感

Posted by 東芝 弘明