『女帝 小池百合子』

雑感,本の紹介

数日前、アイリスオーヤマから修理に出していたサーキュレーターが戻ってきた。結局新品との交換になった。使用して1年が経つので保障期間がなくなってしまったが、全く新しい製品になったので嬉しい。長い間、つながらない電話を待って連絡した甲斐があった。

休みなので読みかけていた『女帝 小池百合子』を読み切った。カイロ大学を首席で卒業したという小池百合子(敬称略)の物語は、彼女を羽ばたかせるために彼女自身が作り上げた蝋の羽、イカロスの翼だった。このイカロスの翼で彼女は今、東京都知事という地位にいる。自分の人生の経歴を物語として作り上げた人物は、「築地も豊洲も生かす」と語り、その言葉を簡単に裏切って生きている。

環境大臣のときに自分の発案で全国に広げたクールビズが、彼女の最大の実績だろう。クールビズの発想転換を見本に、ものをとらえる視点を変えれば、世の中を変化させることができると豪語して、掲げた公約を実行していない人が首都東京の知事をつとめている。

この本は、小池百合子という女性の真実に迫るものだが、同時にぼくにとっては、細川政権から現在の安倍政権に至る劇場型政治の姿を浮き彫りにするものだった。マスメディアが、演出的なねらいをもった政治的戦術を見抜けず、それに乗っかって後追いする中で、政治の本当の対決点が覆い隠されてきた。コロナ対策に至る今も、政治とマスメディアの関係は全く変わっていない。
小池百合子のドラマで輪郭が鮮明だったのは、希望の党の立ち上げのときのことだろう。あのとき前原さんと小池百合子の言い分は食い違った。前原さんは、民進党を解体し全員を希望の党に合流させると言ったが、小池は、「安全保障」と「憲法観」といった根幹で一致しない人は、合流させないと言い放った。このことによって、小池百合子は寛容のない悪者になり、希望の党への期待と希望は急速にしぼんでいった。見方に付けていたメディアが小池の反対側につき、この寛容のないドラマの中で理性を貫いた立憲民主党に期待が集まった。
成功物語を描ききれなかった希望の党は、それでも小池百合なしには形にならなかったのに、政権交代劇が失敗に終わった結果、衆議院選挙後の2017年11月14日、彼女は、希望の党の党首を辞任している。

劇場型の政治は、皮膚感覚で政治を切り取っていく。テレビによってどう見えるのかだけで政治が描かれ、対決構図が組み立てられる。小泉純一郎や小池百合子、橋下徹、小泉進次郎は、メディアを最大限に利用して、政治を翻弄してきたと言っていいだろう。この中で希望の党をめぐる物語は、小池百合子の本質を鮮明に浮き彫りにしている。小泉内閣における郵政選挙が劇場政治の頂点だったが、希望の党をめぐるドラマは、小池百合子自身の発言によって、メディアを敵に回した失敗例となった。

2017年の衆議院選挙の直前、立憲民主党が生まれ、希望の党50人当選に対し、立憲民主党54人の当選となり、この党が野党第1党となり現在に至る流れができた。
希望の党は2017年9月25日に結成されて、2018年5月7日、国民党と新しい希望の党に分かれた。分党によって新しく生まれた希望の党は、2019年6月5日、政党要件を失って政治団体となった。現在衆議院議員2人。政治団体となったが希望の党を名乗っているところは変わらない。

日本の政治の根本問題は何か。政治と経済の何が問われているのか。日本の政治と経済を国民が望む方向にどう転換すべきなのか。こういう基本的なところが、全く真剣に追及されないで、対決点をあおり流されていくのは、国民にとって不幸なことだ。
しかし、一体政治の何が問題なのか。という一番太いところで対決点が鮮明になる時代はやってくる。国民の苦しみは、格差と貧困の広がりの中で生活を壊している。経済的な問題を土台とした野党統一及びそれにもとづく政権構想は、本物の政治的経済的対決点を踏まえたものになり、日本の外交戦略と立憲主義、日本国憲法という対決点を踏まえた努力になる。この努力の先に生まれる政治の転換にこそ、本当の希望がある。

日本共産党は、政治の希望はどこにあるかを語りはじめている。日本共産党が語る希望を希望の党と重ねる人はいない。

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Posted by 東芝 弘明