松竹伸幸氏の志位議長名の本に対する批判について

雑感

松竹伸幸氏が、志位和夫氏の資本論の本に対して、批判的な観点からユーチューブで動画を配信しています。余りにも内容について承服しがたいので、備忘録として書いてみました。ちょっと内容が共産党の社会主義論の発展なので、ここに載せても、一般の人からはわかりにくいと思われます。でもまあ、載せておきたいと思います。
(以下、本文です)

和歌山県で地方議員をしている者です。党中央の人間ではありません。
松竹氏が語っていることが、極めて不正確なので、私の分かっている範囲で、正確さを期すために文書を書くことにしました。

日本共産党が、社会主義は自由と民主主義の発展を不可欠のものにするという認識をもとに明らかにしたのは1976年7月の「自由と民主主義の宣言」(1996年7月一部改正)でした。
しかし、日本以外の国で社会主義を名乗っていた国々に対して、その国の国内問題を論じることは内政干渉になるので、日本共産党のこの見解を他国に押しつけたり、この角度から社会主義国の問題を論じたりすることはしてきませんでした。
ソ連が崩壊した1991年9月1日、常任幹部会は声明「大国主義・覇権主義の歴史的巨悪の党の終焉を歓迎する――ソ連共産党の解体にさいして」を発表しました。
日本共産党は1994年の第20回党大会でスターリン時代も、それ以降の社会体制も含め、ソ連が「人民を経済の管理からしめだし、スターリンなどの指導部が経済の面でも全権限をにぎる専制主義、官僚主義の体制」だったとし、ゴルバチョフによる「ペレストロイカ」も過去の負の遺産を清算するに至らなかったとしています。
この立場は、「自由と民主主義の宣言」という文書からも読み取れるもので、日本共産党の一貫した観点に基づくものだと思います。
1982年7月の14回党大会で、日本共産党は現存する社会主義諸国に対しては「社会主義生成期論」という規定を打ち出し、「生成期」にある社会には、スターリン時代以来の覇権主義や官僚専制といった否定的傾向が残存していると厳しく指摘しました。「社会主義生成期論」は、社会主義国の覇権主義、専制主義的な傾向が克服できなければ、生成期を脱して社会主義として発展することはないとしていました。
しかし、前出の第20回党大会では、ソ連が社会主義に到達しないまま崩壊したという認識を示すとともに、社会主義には到達してるが社会主義国は生成期にあるというこの論は、正確ではなかったとし、現存する社会主義国は、「社会主義をめざす道にふみだした国々」と規定しました。
その後2004年の第23回党大会では、中国に対し「社会主義をめざす新しい探求が開始された国」という規定を行いましたが、中国の覇権主義の強まりの下で、2020年1月の第28回党大会では、
1 核兵器廃絶を「究極的目標」として棚上げしていること
2 東シナ海や南シナ海での覇権主義的行動
3 国際会議の民主的運営を妨げる横暴な態度
4 香港やウイグル自治区における人権弾圧
という4点を上げて中国は社会主義国ではないし、世界にはまだ社会主義に到達した国はないという見解を示しました。
国内の人権弾圧は、国際問題という認識を示しましたが、これは、国内における自由と民主主義の問題に人権弾圧という角度から踏み込んだものです。

日本共産党は、1976年の「自由と民主主義の宣言」以来、社会主義が受け継ぐべきものとして、自由と民主主義の発展の問題を最重視しています。資本主義社会から受け継ぐべきものは、
1 高度な生産力: 資本主義のもとで生み出された科学技術や生産力。
2 経済を社会的に規制・管理する仕組み: 経済危機や環境問題などに対処するために、資本主義の枠内で築かれた規制や管理の仕組み。
3 国民の生活と権利を守るルール: 労働基準法や社会保障制度など、国民の生活と権利を守るために確立されたルール。
4 自由と民主主義の諸制度と国民のたたかいの歴史的経験: 複数政党制、選挙による政権交代、言論・集会・結社の自由といった民主主義の諸制度、そしてこれらを勝ち取ってきた国民のたたかいの歴史。
5 人間の豊かな個性: 自由な活動を通じて育まれた、一人ひとりの個性と多様性。
という5点に整理されています。当然この中には、議会制民主主義や多党制、国民主権、基本的人権、恒久平和、地方自治、労働時間の抜本的な短縮、市場経済を通じて社会主義へというものも含まれます。

志位和夫氏は、こういう日本共産党の綱領路線の上に立って、社会主義における自由な時間の問題について、資本論もひもといて、これを明らかにしたということです。
社会主義国の分析も行わず、資本論を唯一の拠り所にして、社会主義の自由を語り始めたというのは、日本共産党の路線発展の経過を踏まえないものです。
日本共産党は、ソ連や中国という社会主義を名乗ってきた国々と深く付き合いつつ、内政干渉を行わず、覇権主義という対外政策という点から、社会主義を名乗る国への認識を深め、同時に日本における社会主義の道筋を明らかにして、自由と民主主義に対する考え方を発展させてきました。対応の仕方は極めてねばり強く丁寧なものだったと思います。社会主義を名乗っている国に対して、社会主義国ではないとした認識に至るまでに日本共産党は98年もかかりましたが、そこには国内問題には触れないという慎重な態度があったといえるのではないでしょうか。

松竹氏がこの動画で最後に強調している自由と民主主義の問題と社会主義についての認識については、日本共産党は、それを深く理解しており、これらの課題は、現行の日本共産党綱領の路線に全部組み込まれているということです。
国際問題では社会主義を名乗る国の覇権主義を徹底的に批判しながら、社会主義国が抱えている国内の非民主制の問題については、日本共産党の綱領路線の発展に生かすということを繰り返してきたということです。志位氏の資本論研究による自由というテーマは、日本共産党のこういう努力の一環として行われたものでしょう。

批判をする場合は、慎重に事実を踏まえて行わなければなりません。松竹氏の批判は、日本共産党の現在の見解を正確に踏まえたものではなく、日本共産党の姿を歪めて描くものになっています。こんな描き方をする意図はどこにあるのでしょうか。

雑感

Posted by 東芝 弘明