生活保護切り捨ては許せない
片山さつきさんが追及した事件は、不正受給ではありません。現地の自治体に「生活と健康を守る会」などが問い合わせ、自治体が正式に回答しています。
自民党は、扶養できない証明をしなければならない義務を課すよう法律の改正を求め、政府が動き始めています。この動きは許せません。
圧倒的多数の生活保護者は、不正受給をしていません。
日本には生活保護を受けるべき人が、ものすごくたくさん存在しています。問題は増大する生活保護者ではありません。
問題は、格差と貧困を広げてきた経済、その仕組みを作った政治にあります。格差と貧困の土台に横たわっているのは、階級間の格差の広がりです。資本の側が豊かになり、労働者階級の側が貧しくなったことによって、格差と貧困が広がったのです。生活保護が増大したのは、こういう経済と政治の結果です。
この問題を解決しないで、生活保護制度を切り崩すと、貧困の中で命を失う人が出ます。
「働きたい」といっても「雇わない」現実があります。「働く能力があるなら働け」と行政はよく言いますが、働く能力があっても「雇わない」現実があります。「仕事を選ぶな」といいますが、一生懸命働いても貧しくなる仕事があります。「はたらけどはたらけど 猶わがくらし楽にならざり ぢっと手を見る」という現実が広がっています。過酷な仕事の現実をまともに見ないで、簡単に発言すべきではありません。
ぼくの住む田舎では、月収11万、12万という給料の人がたくさんいます。子どもを2人抱えて、月収11万、12万円で家賃を払ったら生活保護以下になります。
でも、生活保護を受けないでがんばっている人はたくさんいます。しかし、ぼくは、受けないこと自体がおかしいと思っています。
一方で受けない理由があります。
保護を受けたら、貯金は20万円までとか言います。車もだめです。生活は徹底的に管理されます。入院が長引くと住宅手当が打ち切られます。家賃が払えなくなります。入院の際に出るのは、保険適用分だけ。保険外負担は保護費の中から出さなければなりません。実際に保護費が足りなくなるケースが発生します。
いったん、生活保護を受けるようになったら、どん底の生活に落ち、立ち直れなくなるケースが多い。なのに行政は、生活保護を受けたら、自立せよと迫ります。
日本の生活保護は、矛盾のかたまりのような制度です。それでもこの制度があるから、命が守られています。
生活保護以外の制度で、文字どおり自立を促進する制度を充実させるべきです。母子家庭の制度や障害者年金制度、失業保険制度、就労支援制度、医療制度（保険外負担の拡大は貧しい人々の生活を徹底的に破壊します。老人医療費の無料化、子どもの医療費の無料化を広げるとともに、労働者本人の医療費無料化、保険外負担の縮小廃止など医療の分野で改悪されてきたことを立て直すことが必要です）などを充実させて、人間の自立をサポートする制度を確立しないと日本の幸福度は上がらないと思います。
生活保護者への攻撃は、まさに最も弱い立場に追い込まれている人を徹底的に攻撃し、さらに生活保護をきりちぢめる最悪の攻撃です。国民の不満が生活保護に向けられています。朝ズバで労働者の最低賃金が生活保護より低いことが問題視されました。議論の方向は、生活保護の削減です。
働く者の賃金が生活保護以下であることを問題にして、賃金を上げようというのではなく、生活保護を縮めよという議論です。
国民を分断させて、低い方にすべてを合わせる議論です。サラリーマンの賃金よりも公務員が高いと言って、公務員の賃金をカットすることと同じです。
国民への分断攻撃は、今、最も底辺に置かれている生活保護にまで向かいました。この攻撃の矛先は、障害者にも向かう可能性があります。
階級間の格差が広がり、働く者の側に貧困が蓄積している現実を直視しなければなりません。日本は、支配する側の階級が、圧倒的多数の人間を支配しています。
国民への分断攻撃は、支配のための最大の手段です。
江戸時代の士農工商という身分制度も国民分断の仕組みでした。今、国民の分断攻撃は、高度の発達したマスメディアが一生懸命ふりまいています。
江戸時代と本質は何も変わらないと思います。
富を蓄積している資本という集団は、化け物のような集団です。欲望は留まることを知りません。国民の命よりも原発の稼働による利益の拡大の方が大事だということです。
「千と千尋の神隠し」にカオナシという妖怪がでてきました。人間の欲望を利用して、自分の欲望をどんどん増大させて巨大化して、何もかも食べるという妖怪でした。日本を支配している資本は、このカオナシのようです。自分の欲望を増大させ、儲けを上げることだけに、ものすごい執念を燃やしています。この利益の一つが原子力発電です。
国民同士が対立するのではなく、巨悪に立ち向かわなければ、国民の幸福の条件は拡大しません。反原発の動きは、日本の現実、日本の本質をしっかり見抜きつつあります。命を守れというこの運動の発展の先に、国民の希望があります。
